地味に電話をする

東京でもレインボートークがあって、初回は200人を超える人が集まったとのこと。わたくしも[ ]、同性パートナーシップ関連の動きを盛り上げようかな、という雰囲気があるのはすばらしい。非婚パートナーシップが保障されていくようになれば、いずれは[ ]アカルイ未来の予兆が遠くにちらりと垣間見え、わたくし個人的にも少し(かなり)うれしうございます。
けれども、同性パートナーシップを考えている法律系の知人数人に尋ねたところ、そろって返って来るのは、実際のところ同性婚を法的に承認させるのはまだまだ難しいと思いますよ、という答え。まあ、わたくしはいずれにせよ現状では法的な婚姻という形態を目指すよりは、パートナーシップをめぐる保障を獲得しましょうという形態を目指す方が好ましいと考えているので、*1同性婚という形態がダメでもそれはそれでいいのだけれど。
ところが、パートナーシップ法のようなものであれば多少成立の可能性が高くはなるものの、[ ]。ましてや三人以上でのパートナーシップとか、「こ・い・び・と」ではない人とのパートナーシップを認めるパックス系の保障なども考えると、[ ]。
しくしく。なんだか微妙に切り捨てられる予感がいたしますわ。
わたくしが[ ]自分のツレがオトコではなくオンナである可能性は十分にあったし、たまたまオトコでラッキー!とばかりに結婚をしてしまうのは、たまたまツレがオンナであるような潜在的可能性としてのわたくしに対して、不当であるような気がしたからだ(ってSFかしらね、まったくもう)。その意味では、[ ]、たまたま三人でパートナーシップ組んでる人はどうなるかしらとか、たまたまパートナーと性愛関係にはない人はどうするかしらとか、いずれにしても結婚制度からまけ出ちゃった人はどうなるのかしらとか、余計なことを考え始めると人生複雑になるぜの典型例。
ということで、パートナーシップの保障を求める方向で行けば、婚姻制度そのものもかなり空疎化するのではないかしら、そちらが望ましいわ、などと思うわけだけれど、もしかしてこのままいくと、パートナーシップ保障が認められても、そこには[ ]とか思って、かなり凹むわ。
といって、凹んでいても仕方がないので、とりあえず[ ]何ができるのか。レインボートークで出てきたのは、とにかく法律的認定の前段階として、法律ではないところでパートナーシップが認定されている事例をたくさんつくってね、ということだった。
一番大きいのは公正証書による相互契約を結ぶことだろうけれども、他にもたとえば、レインボートークでも出てきた、保険契約、あるいはもっと軽いところで、携帯電話やなにやらの家族会員登録なんかも、積み重なれば「社会的には認知されてるぞこら」という力になるよね、などと、トークの後で知人と話をしていると、「それを言ったら、保険証とかってあるよねえ。大学の共済とか、年金とか、家族手当とか」と、その知人が言う。
その知人が同性パートナーを共済保険の「配偶者」に認定できないのかと問い合わせてみたら、「とにかくダメ。理由は知らない。でもダメ」で、らちがあかなかったのだとか。「みんなで組合に電話して問い合わせるとか、やってみようか」などと冗談を交わして、知人とは別れた。のだけれど。
ほう。そんなものでしょうか。
わたくしは、大学で私学共済というところに加入していて、そこで短期給付(保険給付とか休業給付とかそいういうもの。健康保険みたいなものですね)と長期給付(退職給付とか遺族給付とか。年金みたいなもの)が受けられるらしいのですが、そこはどうなのでしょうか。
やはりフェミは生活の実感から。地に足をつけて。などという考えもあることだし、そういうところで細かく非婚パートナーの認定の実績を積み上げていくのって良いことらしいし、そうでなくてもシモジモの声を届かせてみるっていうのは大事だし(たぶん)、と、ここは地味に一人フェミをやってみることに。地に足をつけて、と書こうとしたら、第一変換が「知に」、第二変換が「血に」、になってしまったあたりが、わたくしのいかにも地に足のついていないブンガク系机上フェミぶりを示していて、微妙だったりはしますが、まあそれは置いておくとして。
とりあえず私学共済からもらった『私学共済ブック2005』なるハンドブックを眺めてみる。ここでパートナーが大きく関係してくるのは、多分大きく分けて二つ。*2
一つは、パートナーを「被扶養者」に認定したい時。これは主に短期給付にかかわるらしい。
パートナーを「被扶養者」に認定できると、何があるのか。例えば同じ保険証に入れるし、加入者当人(たとえば、わたくし)が死亡した場合に埋葬料や弔慰金などが給付されたり、被扶養者の死亡時には家族弔慰金なるものがもらえたりする。パートナーの出産(これは「被扶養者」でなくて「配偶者」でも可らしい)、病気、怪我などの場合に短期間ではあるけれど休業手当金がもらえる。
で、ここで「被扶養者」と認められるのは誰か、というと、とりあえずここで関係するのは、「配偶者(未届けではあるが事実上婚姻関係にある場合でもよい)」(それ以外には、「子、父母、孫、祖父母、弟妹<兄姉はダメなんかい!」が「加入者と別居していても認定できる人」として認められます)。実はこれに「収入限度額」というのがあって、「給付、年金収入、事業・不動産所得などが年間130万円未満であること」という条件が付くので、[ ]。
もう一つパートナーが関係してくるのが、「配偶者」の扱いで、上で書いた短期給付の出産時休業手当金、あるいは結婚手当金(こちらも未届けでもOKらしい)、そしてこちらはとてもややこしくて詳しくは分からないのですがとにかく共済年金関係については、「被扶養者」でない「配偶者」であっても、それぞれのケースに応じて一定の補助が出たり年金がもらえたりするらしい。わたくしの場合、子供を生んだりする予定はないし結婚手当金もいらないけれど、年金については多少気になる。とりわけ、わたくしが、あ!と、思いがけずぽっくり行ってしまった場合に、[ ]というあたりが。ハンドブックを眺めてみると、年金関係は「配偶者」とあって、「未届けでも可」との注意書きは、ない。
ということで、私学共済に電話してみた。
「パートナーの被扶養者認定および年金の受給資格について伺いたいのですが。わたくしが加入者本人です」と最初に伝えたのにもかかわらず、いきなり「なに?奥さんが被扶養者になりたいの?だんなさん私学共済に加入してるの?」と言われて、アタマからちょっと凹んだのだが、構わず突き進む(教員なんて女性も多いだろうに、どうして加入者が男性、電話してきた女性はその配偶者って決め込むのか、かなり不思議)。あちこちまわされた挙句、とりあえず年金関係の担当の方に説明をしていただく。
それによると、基本的に「配偶者」というのは、結婚をした相手。未届け(いわゆる異性間の事実婚)の場合、どうやら「第三者からの確認・証明」が必要らしいのだけれど、その「証明」のために「何が」必要なのかは、あらかじめには分からないのだそうだ。え?って感じだけど。
で、「この二人は未届けですが夫婦と同じですよ」という確認は、普通は民生委員などが行うのだけれど、その場合も、家族・友人などの証言は不可とのこと。口裏合わせちゃうからだそうです。しかし、家族でも友人でもない人に「この人と結婚してないですが夫婦みたいなもんです!」って言って歩いてる人ってどのくらいいるっていうのよ。子供でもいれば学校の保護者会とかあるかもしれないし、すんでいるところによってはご近所づきあいもあるかもしれないけれど(しかしそれは友人では?と思ったり)、都会の集合住宅に子供なしで住んでいたりすると、別に「あの二人は夫婦みたいなもんですよ」なんて知ってる人が、家族・友人以外にいるとは、とても思えない。結婚式に一緒に呼ばれたりとか、と言われたけれども、家族でも友達でもない人にカップルで結婚式に呼ばれることって、そんなに多いものなの?わたくし経験ありませんが。
しかも「夫婦みたいなもんってのは一緒に住んでるってことですか?」と聞くと、一緒に住んでいても、友人だったらダメ、とのこと。同性パートナー関係には、早くも、そしていかにも、暗雲。生計を一緒にしているというのでも、ただの同居人だったら、ダメ。[ ]そして、公正証書がつくってあっても、あらかじめそれでOKかどうかは、分からない<民生委員さんの判断とその後の審査次第、とのこと。
もう、よっぽどのこと、「つまり性行為があるかないかですか?」と、聞きたかったわね(説明してくれた担当の方に非はないし、親切な方だったから、聞かなかったけれど)。要するにそういうことじゃないよ、だって。性行為抜きのパートナーシップが文句なくパートナーシップとして認められる唯一の方法が法的婚姻だというのは、なんていうのか、皮肉?皮肉なの?
で、おそらくダメだろうな〜と思いつつ、とりあえず、「同性パートナーの場合はどうですか?」と、聞いてみる。「配偶者として認められますか?」
言うまでもなく、答えはNOでした。というか、「同性パートナー」の意味を理解してもらうのに、しばらく時間がかかったり。理由を尋ねたところ、私学共済は「私立学校教職員共済法」という法律に基づいて運営されていて、そこでは同性パートナーは認められていない、とのこと。その法律に「妻」「夫」という形で記述があって、その「妻」「夫」が現行法においては「オトコの夫を持つオンナの妻」「オンナの妻を持つオトコの夫」ということになっている、ということらしい。
え〜ダメなんですか〜困るなぁ、と気弱に主張してみるものの、詳しいことは法律を見てくださいね、と優しく言われて、すごすご引き下がりましたよ。相談窓口でいきなり「法律を見てくださいね」なんて法律のド素人に言うなんて、相談窓口の意味ないじゃないのよ!とは思ったものの、なんとなく、法律も読めないアンタが悪いのよ、と言われているような気がして、弱気になってしまいました。
仕方なく法律を見てみる。法律わからないんですけれどもね。付則っていうの?あれが多すぎてどこがどうなってるのかひたすらに困惑するし。
まあ、とりあえず分からないままに見てみると、件の私立学校教職員共済法(私学共済法)には、まずこういう規定がある。

第二十五条  この節に規定するもののほか、短期給付及び長期給付については、国家公務員共済組合法第二条 (第一項第一号及び第五号から第七号までを除く。)、第四章(第四十一条第二項及び第三項、第四十二条、第四十二条の二、第四十六条第一項、第五十条から第五十二条まで、第六十八条の二、第六十八条の三、第七十二条並びに第九十六条を除く。)、第百十一条第一項及び第三項、第百十二条、第百二十六条の五、附則第十二条(第八項を除く。)、附則第十二条の二の二から第十二条の八の三まで、附則第十二条の十、附則第十二条の十一、附則第十二条の十二第一項(第二号を除く。)及び第二項から第四項まで、附則第十二条の十三、附則第十三条の九、附則第十三条の十(第七項を除く。)、附則別表第一、附則別表第二、別表第一並びに別表第二の規定を準用する。(以下略)

要するに、給付については、国家公務員共済組合法に準じるからそっちを見なさい、と。仕方がないので、そちらを見る。すると、まず、こんな記述。

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
二  被扶養者 次に掲げる者で主として組合員の収入により生計を維持するものをいう。
イ 組合員の配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫、祖父母及び弟妹
ロ 組合員と同一の世帯に属する三親等内の親族でイに掲げる者以外のもの
ハ 組合員の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子並びに当該配偶者の死亡後におけるその父母及び子で、組合員と同一の世帯に属するもの
三  遺族 組合員又は組合員であつた者の配偶者、子、父母、孫及び祖父母で、組合員又は組合員であつた者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた組合員であつた者にあつては、行方不明となつた当時。第三項において同じ。)その者によつて生計を維持していたものをいう。

ということで(上の記述はどれも私学共済法第二十五条によって「除く」ことになっていない部分、だと思う)、配偶者というのは、定義上では「婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ」ということらしい。妻とか夫とか言ってないじゃないのよ!と思っていたら、言っている部分も、あった。遺族年金に関する部分。

第九十一条  夫、父母又は祖父母に対する遺族共済年金は、その者が六十歳に達するまでは、その支給を停止する。ただし、その者が障害等級の一級又は二級に該当する障害の状態にある場合には、その状態にある間は、この限りでない。
2  子に対する遺族共済年金は、妻が遺族共済年金を受ける権利を有する間、その支給を停止する。ただし、妻に対する遺族共済年金が次項本文又は次条第一項の規定によりその支給を停止されている間は、この限りでない。
3  妻に対する遺族共済年金は、当該組合員又は組合員であつた者の死亡について、妻が国民年金法による遺族基礎年金を受ける権利を有しない場合であつて子が当該遺族基礎年金を受ける権利を有するときは、その間、その支給を停止する。ただし、子に対する遺族共済年金が次条第一項の規定によりその支給を停止されている間は、この限りでない。
4  夫に対する遺族共済年金は、子が遺族共済年金を受ける権利を有する間、その支給を停止する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
5  第二項本文の規定により年金の支給を停止した場合においては、その停止している期間、その年金は、妻に支給する。
6  第三項本文又は第四項前段の規定により年金の支給を停止した場合においては、その停止している期間、その年金(前条の規定により加算する金額を除く。)は、子に支給する。

ここでは確かに「妻」「夫」と書いてあるので、これはどうなのかしら。「妻」「夫」の法律上の定義が分からないのだけれども、それって「オトコにとっての配偶者は、妻」ということなのかしら、それとも「自分がオトコでありかつ配偶者でもある人間は、夫」ということなのかしら。それよりもわたくし不勉強で、ここで「妻」と「夫」が別項目で立ってる理由がわからなかったりする。「国民年金法による遺族基礎年金を受ける権利」と関係あるらしいのだけれど。
いずれにせよ、私学共済の場合、異性間事実婚は認められそうだけれど(セックスする関係にあるって認めてもらえればね!)、同性パートナーシップは、この法律がある限りややこしそうだということが、分かりました<小学生の自由研究みたいに生産性のない結論
「配偶者」の法的解釈を変えてしまうか、あるいは私学共済法において「配偶者」記述を別の法律用語に置き換える法改正をするか、どちらかの必用がありそう。けれども前者は他の法律にがが〜っと波及する可能性があるからなかなか難しそうだし、後者は法改正だからなあ、ますます大変なのかしら。国家公務員共済組合法はもっと改正できなさそう。いずれにせよ簡単な抜け道はないってことよね。あとは、各学校での家族手当に的を絞るしかない(こちらは法律無関係らしいので)。わたくしのとても尊敬する先輩が今こちらを学校当局と交渉中だったりします。まさしく地に足のついた運動<とは言わないのかしら。フェミ的には。
ただ、国家公務員共済組合法というのが昭和三十三年に出来ているらしいのだけれど、たとえば事実婚の条項なんかは最初からあったのだろうか。ちょっとぐぐっただけじゃ出てこなかったし、そもそもそういう法律改正の歴史の調べ方がどうもわからないのだが、そういう条項が後から入ったのだとすれば、ちろっと改正とかって可能なのかも、と思ったりもする。それに、私学共済の場合、窓口担当の人が親切だったにもかかわらず「同性パートナーの場合」という質問を理解するのに時間がかかったりしたということは、そもそもそういう要望自体あがっていないのではないかとも思ったり。
どうでしょう。私学共済加入者って小学校から大学まで相当数の教職員がいるはずだし、皆様、地味に共済組合に電話をかけて問い合わせてみませんか。問い合わせがたくさん来ると「あ〜そういう要望があるみたいですね」みたいになってくる、かも(<すごく大きい「かも」だけど)、しれないし。電話だとこちらの顔も名前も分からなくって安全!な上に、時間もお金もかかりませんよって、結局わたくしへたれですわね。

追加(4/14記)

myrielさんにも教えていただいたことですし、「地味に電話」つながりっていうのもアリかなもしれないということで、後出し的にTB打ちます。
生命保険会社はどこまで同性パートナーを受け入れるか?
わたくしのへたれぶりとは比べ物にならない、すごいリストになっています。しかもポジティブな反応ありますし。
同性パートナーと加入を考えている方はもちろん、異性パートナーとの加入を考えている方でも、そこらへんの「対応ぶり」を考慮要因の一つに加えるとか、使い方は色々ありますね〜。
わたくしも、ちょっと職場で動いていることがあって、その参考資料として早速プリントアウトして関係者にお渡ししました。遠藤まめたさん、ありがとうございます。
で、そうやって地味電の数が増えていくとたのしいなあ〜などと、やっぱりいまだに思っているのですが、いかがでしょう。L-cafeさんのパートナーシップのエントリにもTBしておきますので、地味電してみたよ!という方がもしいらしたら、そちらでお目にかかれればとても嬉しいです。

*1:戸籍とか婚外子差別とか、そういうところとの関係で、現存の婚姻制度をほぼ維持したまま同性間の結婚だけをそこに組み込むという方向には賛成できないです

*2:ざっとしか見ていないので違うかもしれません。詳しい方がいらしてご教授いただけるとそれはそれで非常にありがたいです