というわけで、やっぱりIDAHOは支持します

下のエントリのコメント欄では反対意見も戴いているAct Against Homophobiaの企画 。tnさん、今回はエントリ立てて反対していらっしゃいますね。
ここで改めて書いておくと、わたくし自身は例の大峰山の件があった時期、Pの調子が非常に悪くて結構個人的にいっぱいいっぱいだったりしたので、リアルタイムでは殆ど経緯を追っていない。お恥ずかしいことだけれど、あ〜そういうことがあったのだなという程度の認識だったというのが、事実。
で、あらためてググって見たりしたけれども、実際のところどう何があったのか、大峰山登山プロジェクトの側の言い分は読めるし、それに対する反論も(かなり感情的な十把一絡げの「だからフェミは」的なものも含めて)読めるのだけれども、ちょっとはっきりした事実確認ができかねている。そもそもあの場所が「公道」ならば、住民の人権とか信仰の自由とかという問題に収斂させるのは少し違うような気がするし*1
はっきり事実として分かるのは「質問状」の内容で、それについてはわたくしはちょっと賛成しかねるとは思う。一つ一つの言明が間違えているかどうかというより、戦略の問題として、あれでは相手の感情を逆なでして事態を硬直化させるだろう。もちろん、相手の感情を逆なですることそれ自体を意図する運動なり行動なりというのはあるだろうしあってしかるべきだと思うけれども、それはより広範な人々を相手にして何らかの認識なり自覚なりを促すショック療法的な行動であって、非常に限定されたコミュニティーに対して特定の要求を通そうという場合にあのような行動が有効だとは思えない。
ただ、あの行動はLGBTの運動として行われたものなのかというと、そういう感じはあまり受けないし、一般にもむしろ「フェミ暴走」として受け取られているような気がする。もちろん、それにもかかわらずトランスの当事者を利用したりLGBT関連の事柄をLGBTの利益にならない(ように思える)行動において濫用したということに対する批判は当然あるべきだと思うけれど。
ただ、それはそれとして。
大峰山プロジェクトにかかわっていたイダ氏が賛同メッセージを送っているというそれだけの理由で、IDAHOの活動そのものに不賛成を表明しようとは、わたくしは思わないです。いや、確かに「あまい」のかも知れませんが。でも、率直に言ってイダ氏のメッセージがそれほど大きなインパクトを持つとも思えないのですよね。すでにページかわっちゃってるし、メッセージでイダ氏がおっしゃってることは全体として大きく間違えてはいないかもしれないけれども、やっぱり「おいおいここで自著宣伝ですか。まいったなあ」という感慨を喚起する可能性の非常に高いメッセージになってしまっているので、あまり真面目に受け取られないのではないかとも思うし。*2
それに、IDAHOJapanの活動は、一つの「団体」をつくるというよりは、「ホモフォビアに反対しましょう」という一点のみでとりあえずより集まって呼びかけをしていきましょうという活動でもあり、そこに「ホモフォビアに反対しましょう」という点以外では大なり小なり意見を異にする人々が集まってくるのは、むしろ当然のことだと思う。
わたくしは現在のところTokyo PrideのやっているTLGPのあり方には賛成できないけれども、Tokyo Prideが呼びかけ人として名前を連ねているからというだけで、この活動に反対しようとも思わない(そもそも、パレードもPの調子が許す限りは参加・あるいは応援に出かける予定だし)。
ホモフォビアに反対しましょう」という名目を立てておきながら「あなたはへテロだから/バイだから/トランスだから、あなたの賛同メッセージはいらない。一緒に活動はできない」というスタンスが取られたり、あるいは「ホモフォビアには反対だけれども、LGBTコミュニティーの中でのバイフォビアは/トランスフォビアは/ミソジニーはどうでもいい」というコメントがオフィシャルに出てきたりすれば、わたくしはそれには明確に反対だするだろうと思う。けれども、「とりあえず」「名目上であっても」インクルーシブなスタンスが維持されている以上、わたくしはそこに様々な意見や立場の違いがあるのはむしろ健全だと思うし、寄せられたメッセージや賛同者のスタンスにわたくしが賛同できないものがあれば、その特定の意見なりスタンスになりに対して個別に反対意見なり批判なりを寄せる形で対話を続ける方が、より建設的ではないかと考える。
TLGPに今年も出かけよう、「とりあえずは」応援しようと思っているのも、その収益金の一部がTLGPにまわされるらしいレインボーバンドを、これってかわいくないわ!どうやって使うのよ!と苦悶しつつ「とりあえず」購入しようと思っているのも、TLGPの名称のあり方や、現在の名称を支持する人々の意見には全く賛成できないけれども、「いちおう」TLGPは公式スタンスとしてはパレードはインクルーシブなものだというタテマエを崩していないからだし、そうである以上は、現在あるものを潰してしまうよりは、それを応援しつつ批判すべきところは批判して改善を求めていく方が、より効果的だと考えるからだ。
むしろIDAHOの活動に何らかの危険性があるとしたら、たとえば現在のところこういうLGBT系の活動に積極的にかかわっている尾辻さんには、政治家としての権威なり何なりというものがあるわけで、彼女のオフィシャルな言動がたとえばバイフォビック、トランスフォビックなものになっていったり、それを黙認するようになっていったりすることがあれば、そのインパクトはやはり大きいだろうから、そこはちゃんと見ておかなくてはとか、そういう部分だとわたくしは思っている。彼女にはできればTLGPの名称関連ではきちんとした批判をして欲しいなとか。まあ、でも、彼女一人に全てを期待しちゃうのも違うとも思うわけで、そこら辺が難しいなと思うわけですが。
あるいは、それこそTokyo Prideが企画者に入っているわけで、「アンチ・ホモフォビア」が単なる「アンチ・ゲイ男性フォビア」になっちゃったらものすごくイヤ!とかホモフォビアは「ゲイ・レズビアン」だけではなくてトランスとかバイとかにも暴力的に作用するものであるのにそこが完全に消されちゃったらイヤ!とかっていうのはあって、それは気をつけておきたいとも、思う。
と、言うわけで、わたくしはIDAHO、応援します。っていうか、後で判明してご批判受けても困るのでカミングアウトしますが、IDAHOJapanの運営とは全く無関係ではあるものの、ものすごく端っこの方でボランティアで少しお手伝いをする予定です。せっかくの活動がわたくしの立場から見て「そっちに向かっちゃうと悲しいぃぃぃ」と言う方向に進んでしまうとつらいので、多少なりとも自分の思うところを反映できたら嬉しいと考えるからです。要するに「わたくしの言うことをきいて!」というわがままぶりを(しかも非常に地味にへたれに)発揮しているだけですが<やっぱりアクティビストには絶対になれない

*1:「暴力行為」「脅迫行為」があったかどうかについても、そういうわけで、ちょっと確認ができていません

*2:というわけで、イダさん、あれは失敗だと思いますよ。少なくともわたくしは、それなりに真剣にかかわっている人もいる活動を宣伝のためにああいう風にabuseされると、御著書を購入・拝読する意欲が激減します