既知との遭遇

眠たい目をこすり、もわんとする熱気をかきわけて出勤する朝。今日は午前中の仕事の後で映画祭に出かける予定で、それだけが楽しみであるなあなどと思いつつ、コンビにで購入したミルクコーヒーをだらしなくすすりながら研究棟のエレベーターに乗る。目の端に何かぴかぴかしたものがうつって、それを見るともなく見ていたら、こそりと動いてなんだか近づいてくるような。え?と思ってあらためてそちらに目をやると、いた。
エレベーターの中に。お馴染みの、大きく黒く光るゴキブリ。
狭いエレベーターの中でばさっと飛ばれたらこちらの負けなので、とにかく相手を脅かさないようにこちらもじりじり動いて可能な限りの距離を保つのだけれど、なんといっても動く場所が余りないのよ。ほんの数十秒(<旧式なのでとても遅い)のエレベーター・ライドがあれほどスリルに満ちていたことは、わたくしの短くない人生においても、なかったように思う。眠気もとび汗もひき毛穴も締まるって感じ。美容にはいいのかも。
ドアが開くと同時に慌てて飛び出し、先方がつられて一緒に下りてこなかったことも確認したけれど、さて、これから授業に行くときにあのエレベータをまた使わなくてはいけないのね。あらまああらまあ。